200617 原油の話
こんばんは。
東京の街を歩いていると、マスク装着率95%くらいいってるんじゃないか、というくらいに皆さん本当にマスクをしていますね。私も自宅以外では、必ずマスクをしています。
東京の感染者は、主に「夜の街」関係が多いという報道ですが、日本人の長所である「規律的な行動」が今も継続していることを実感します。
新型コロナの抗体は、東京都で0.1%の人しか持っていないという調査がありました。
ということは、99.9%の人は、これからかかる可能性があるということ。
引き続き、社会全体で規律的に、感染拡大を予防していく必要があるんだと思います。
さて、今回は原油について。
原油といえばWTI原油が最も有名な指標原油ですが、先月の価格大暴落も記憶に新しいところです。
直近限月の価格がマイナスになるという、コモディティの世界では通常起こり難い現象が、最も流動性のある原油で起きるというまさに異常事態。
価格がマイナスの商品ということは、「タダどころか、売り手がカネを払うから、現物を引き取ってくれ」という状態です。
カネをもらって現物引き取って、激安で売ればもうかるわけですから、常識的に考えてあり得ないんですが、これにはWTIという原油の特徴が大いに現れているわけです。
WTIは、アメリカのオクラホマ州クッシングという地点で受け渡される原油の価格のことを言うわけですが、このクッシングという地点、内陸です。
内陸で受け渡される原油は、パイプラインで運ぶか、タンクに貯蔵するかの対応が必要になるわけですが、新型コロナによる世界的な需要減により、産出される原油の行き場がなく、クッシングにある原油タンクはもうパンパンになっていたわけです。
つまり、原油はどんどん出てくるし、パイプラインで送られてくるけども、それを置いておく場所がなかったわけです。
これが、海の近くでの受け渡しであれば、オイルタンカーに積み込んでどんどん輸出するなり、あるいはタンカーを地上タンク代わりにして油積んで海に浮かべておくこともできますが、内陸ではそうもいかず、限られたタンクキャパシティで現物のフローを吸収する必要があるわけです。
こうして、「カネ払うからこの原油持って行ってくれ」の状態になったというわけですね。
要因はこれだけではなく、原油に関連する金融商品(いわゆる原油ETF)へ大量のマネーが流れ込んでいたことも要因のひとつです。
細かい話は難しくなるのですが、超簡単に言うと、大量の原油投資マネーが「直近限月」つまり最も最短で受け渡される原油価格に連動した金融商品に流れ込んでいた状態で、日時が経過して、「次の限月」にそのマネーを投資しなおす必要が出てきたことが影響しました。
これは、「直近限月」を売って、「その次の限月」を買うという行動(ロールオーバー)です。
これにより、巨大な量の直近限月の売りが発生し、価格の大暴落の引き金にもなったということです。
現物がじゃぶじゃぶに余っているときは、期近で受け渡す商品の価格が下がり、期先の商品の価格が高くなる「コンタンゴ」と呼ばれる状態になるため、安く売って高く買いなおすこととなりますから、原油ETFの保有は「現在価格」だけではなく、先物カーブの形状も認識しておくことが重要です。
詳しくない人には非常に難しい世界。要は、「原油は素人が手を出すな」ということです。。。
つらつらと書きましたが、要は、WTIという商品の特性(内陸の受け渡し)と、投資マネーのロールオーバーにより、直近限月に強烈な売り圧力がかかり、その結果が歴史的に超まれなマイナス価格となった、というお話でした。
なお、私が好きな原油はBrentと呼ばれる、イギリス、ノルウェーの北海にある海上油田の原油価格で、WTIと並ぶ世界的な指標原油です。
こちらは海上ものですので、WTIのような貯蔵キャパシティの問題は起きにくく、WTIがマイナス価格の時も20USD/bbl程度の価格で収まっています。
また、中東から日本に運ばれる原油は、その価格決定にこのBrentが採用されていることが多く、WTIよりも日本経済に直結している原油価格と言ってもいいと思います。
WTIとBrentについては、CMEがわかりやすい資料をアップしています。
https://www.cmegroup.com/ja/education/files/wti-vs-brent.pdf
下のチャートは、Brent先物(いわゆるICE Brent)の8月ものです。
今年に入ってからの価格下落がひと段落し、半値戻し手前で勢いを失っている状況。
個人的には、ここからさらに上げていく力はあまりないと思っており、6/8の直近高値43.41USD/bblにもう一度挑戦するかどうかですが、現時点では価格は下方向でイメージを持っています。
引き続き、価格動向に注目です。